同じゴムの輪だけど夏タイヤと何が違う? スタッドレスタイヤが雪や氷でグリップするワケ
長年にわたってデメリットを克服し世界トップレベルの性能に!
毎年暖冬と言われつつも、異常気象ということで突然、大雪になったりするので、欠かせないのがスタッドレスだ。実感している方も多いと思うが、チェーンを巻かなくても、雪だけでなく、凍結路でもかなりのグリップ力を発揮してくれる。よく見るともちろん夏タイヤとは違うが、かといって大きく違うわけでもないスタットレスタイヤ。どうしてグリップさせることができるのか。今さら聞けない基本知識を解説しよう。
1)ゴムが柔らかい
雪はもちろん、でこぼこした氷に対して重要になるのが、ゴムの柔らかさ。柔らかければ追従性が増すので、グリップも高まる。しかし、寒いと硬くなるのがゴムである。各メーカーともシリカという材料を入れたり、最近でオイルやジェルを含んだゴムを採用することで柔らかさを確保している。ただ単に柔らかくすると減りが早くなるのも悩みどころではある。
2)水膜を除去
CMでもやっていたが、乾いた氷は滑らない。冷凍庫の氷に手がくっ付くのも解けていないから。表面の水膜を除去するために、吸水ゴムを採用したり、細かな穴を作って水分を取り込むようにしている。取り込んだ水分は遠心力で飛ばされるので吸水力に限界はない。ちなみに以前は水分を弾く撥水ゴムの採用もあったが、現在は下火だ。
3)引っかく
従来、ファイバー片やクルミ、軽石などを細かくしたものを含むことで氷を引っかいてグリップさせるようにしてきた。現在は採用例は減っていて、ゴム自体でグリップするような方向に進んでいる。
4)細かい溝やブロックを作る
雪に対してグリップするには噛み込むことが大切。だから、トレッドは夏タイヤよりもブロックが大きくて、さらに細かい溝が刻まれている。これが雪に食い込んでグリップする。ただ、ブロックかつ柔らかいゴムに細かい溝を入れると、ドライ路面で不安定になったり、ブレーキや加速時によれるので、溝の中で支え合うように内部にギザギザの切れ込みが入れられていたりする。
5)トレッドをできるだけ広く
面圧の問題もあるが、基本的にはトレッドが広いほうが、上記の特徴を最大限に引き出せる。
このように、スタッドレスならではの特徴というのは多くあるが、言葉にすると簡単でも実際の効果となると難しいものがあったりする。それを長年にわたって克服、進化させてきたのが日本のスタッドレスタイヤといってよく、世界トップレベルの性能と言われるのはこのためだ。